おむつには、「おしっこお知らせライン」「おしっこお知らせマーク」が付いていますよね。
おしっこで濡れると、黄色から青色に変化して教えてくれる便利な機能。
でも、どういう仕組みで色が変化するのでしょうか?
目次
おしっこお知らせライン・マークとは?
おしっこお知らせライン・マーク
おむつの中央部分に黄色いマークやラインが入っていると思います。
皆さんご存じかもしれませんが、これが「おしっこお知らせライン・マーク」です。
オムツを履いておしっこをすると、このマークが黄色から青色に変化します。
でも、どのような仕組みで色が変わるのでしょうか?
オムツのお知らせマーク、技術用語はインジケータと言います。
メリーズは三本線が特徴ですが、真ん中をセンターインジケータ
両サイドを一対のサイドインジケータと呼びます。
Googleで調べてみても・・・
実は、事前にGoogleでおしっこお知らせマークについて調べたのですが、青色に変える成分についてを解明するには至りませんでした。
各メーカーのホームページには、おしっこお知らせマークの説明はあるのですが、変色メカニズムの記載は一切ありません。下のような説明ばかりがヒットしてしまいます。
ということで、特許公報からその変色メカニズムを考察しました。
弁理士の本領発揮だわ…!
一応、特許のプロだからね。
特許公報を調べてみた
オムツのインジケータについて検索してみると、このようなことが分かりました。
各メーカーによって差異があるかもしれませんが、
例えば、パンパースを製造販売している「ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー(P&G)」の特許公報(特表2017-501768)を見てみるとこのように書いてあります。
【0065】
湿り度インジケータは、有利に色変化信号を提供することができ、これらは、典型的には、乾燥時に第1の色、及び湿潤時に第1の色とは異なる第2の色を有する組成物によって得ることができ、両方の色が、物品の乾燥状態及び湿潤状態を考慮する外部観察者によって認識可能である。湿り度インジケータは、とりわけ、好適なpHインジケータ又は尿と接触したときに色を変化させる別の化学物質を含む、色変化組成物であり得る。そのような組成物は、例えば、国際公開第03/070138A2号、同第2010/120705号(Klofta)、又は米国公開第2012/165771号(Ruman)に開示されている。以前に引用された文書は、そのような好適なpHインジケータのいくつかの実施例を付与し、例えば、ブロモクレゾールグリーン、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールブルー、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、クロロフェノールレッド、ブロモチモールブルー、ブロモピロガロールレッド、ブロモキシレノールブルー、アクリジン、又はアクリジンオレンジ、チモールフタレイン、チモールブルー、キシレノールブルー、ブロモクロロフェノールブルー、及びインディゴカルミンを含む。例えば、ブロモクレゾールグリーンは、酸安定剤を有する組成物に適用され得、それにより、pHインジケータは、乾燥物品上で黄色を出現し、尿と接触したときに緑青の色合いに変わり、典型的な尿のpHは、約pH 7である。
また、国内王手の特許公報( 特開2009-232987 )には、オムツのマークについてこのように記載されています。
【0026】
[2-1]インジケーター:
「インジケーター」は、尿との接触により呈色する薬剤である。呈色の機構は、特に制限されるものではなく、水分に反応するものであってもよいし、pHの変化に反応するものであってもよい。なお、「呈色」には、「発色」(無色から有色に変わる)は勿論のこと、「変色」(色が変わる)、「消色」(有色から無色に変わる)も含むものとする。
【0027】
インジケーターは、前記のような機構により呈色する呈色指示薬(例えば、ブロモフェノールブルー等のpH感応成分)を含む組成物を用いることができる。本発明においては、そのような組成物を自ら調製してインジケーターとして用いてもよいし、市販の組成物を用いてもよい。
つまり上記公報によるとおむつマーカーの変色には、
- 水に濡れると変色する機構
- 尿によるpH変化を利用する機構
のいずれかを用いる場合が多いということが推定できます。
また、オムツお知らせマークに使用できる試薬も例示列挙されていました。
これらの物質は、理科の実験などで中和滴定に使用する物が中心です。
つまり、オムツの中へ排尿するとpHが7付近に変化する
↓
その結果、黄色から青色へ変化する
ようにできているんですね。
(各メーカによってメカニズムが異なる場合があります)
では、我が家で使用しているメリーズが、水による変色作用を示すのか、pH変化により変色を示すのか、実験をしてみることにします。
おしっこをすると青くなる理由とは?
実験で変色を確認してみると
実験方法は、非常に単純です。
オムツの中に、アルカリ性溶液、中性溶液、酸性溶液を加えて、おしっこお知らせマークの色の変化を観察するというものです。
自宅での実験ですので、家庭内にある物をかき集めて実験材料にしました。
- アルカリ性溶液 → 過炭酸ナトリウム水溶液(pHは、10~11程度と推定)
- 中性溶液 → 水道水(pHは、7程度と推定)
- 酸性溶液 → 食酢(pHは、3程度と推定)
それぞれ、100mLをオムツのおしっこお知らせマークの裏側に流し、マークの色変化を観察します。
実験結果がこちら。
アルカリ性では、「青色」を示し、
中性では、「青緑色」を示し、
酸性では、「黄色」を示しました。
つまり、
[アルカリ性] ↔ [中性] ↔ [酸性]
青色 青緑色 黄色
という色彩変化を示したことになります。
おむつに使用されている「青色」の正体
今回の実験では、色の変化のみで成分分析等は行っておりませんので、物質を確定することはできませんが、おそらくBTB(ブロモチモールブルー)溶液が塗工されている可能性が高いと考えられます。
BTB液って、中学の理科で習いましたよね。
BTBは、分析化学でよく用いられる酸塩基指示薬(pH指示薬)のひとつで、分子式 C27H28Br2O5S で表されます。
淡黄色または淡紅色の粉末で、水溶液はBTB溶液と呼ばれます。
酸を検出する指示薬として、ナトリウム塩の形で市販されています。
酸性 ← (赤) − 黄 − 緑 − 青 − (紫) → 塩基性
BTB溶液は、理科の実験でも一般的に使用されており、価格も安価、危険性も低い、というメリットがあります。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
オムツのおしっこお知らせマークが、pH指示薬を塗工することで出来ていたことをご存じでしたか?
ちなみに、BTB溶液は可逆性で、青色を黄色に戻すことができます。
現にメリーズパンツのマーカーも、青色になった物に食酢をかけると黄色に戻すことができるのです。
(ただし、再利用はやめてください)
もし良かったら実験として試してみてください。
おむつ替えは「おむつが汚れたら」が基本です。つまり、おしっこをした後またはうんちをした後になるべく早く変えてあげるのがベストです。
おむつ替えのタイミングを見極めるには、おむつに設計された「おしっこお知らせマーク」をチェックします。グ~ンの紙おむつにはおしっこがつく部分に、黄色い線が引かれています。この線が「青」に変わっていたらおしっこをしたというサイン。この線を見るだけでおむつが濡れたかどうかがすぐにわかります。
育児になれない新生児の頃は、この線をチェックしただけでは判断に困ることも。そんなときは、ちょっと手間はかかりますが、おむつの中をチェックしましょう。少しずつタイミングがわかるようになり、おしっこお知らせサインやおむつの触り心地、赤ちゃんの様子などでおむつ替えのタイミングがつかめるようになるはずです。
ちなみに、うんちをしたときは「におい」でだいたいわかります。「どっちかな?」と思ったら赤ちゃんのお尻に鼻を近づけてにおいをチェックしている先輩ママたちが多数います。