食物アレルギーって治るの? どんな治療法があるの? 症状が出たら? アレルギーに関する心配事について、徹底解説!
目次
まえがき
前回、「食物アレルギーは治ることもある」って言っていたけれど、どういうことなの?
知り合いに、アレルギーが治ったという人が何人かいるんだ。
でも、実は僕もあまり詳しくは知らないんだよね。
というわけで、今回はアレルギーは治るのか?について解説していきます。
アレルギーって治るの?
成長によって自然に治ることが多い
食物アレルギーは子供に多く、年齢が大きくなるにつれ少なくなる病気です。厚生労働科学研究班の全国調査では、0歳が最も多く約33%を占め、1歳までが50.7%、 4歳以下の乳幼児が全患者数の70%近くとの結果が出ています。
子供に食物アレルギーが多いのは、まだ成長途上のため消化機能が未熟であり、アレルゲンであるタンパク質を消化することが出来ないことが一つの要因と考えられています。成長にともない消化吸収機能が発達してくることで、原因食物に対して耐性がつく(= 食べられるようになる)ことがあるのです。
卵・牛乳・小麦などは、小学校入学前に8割程度は反応を起こさなくなる「耐性化」がみられます。 ピーナッツ・魚介類・果実・ソバ・種子類は、耐性化しにくいアレルゲン食品とされています。また、一般的に、幼児期後半(3~6歳くらい)以降に発症した食物アレルギーは治りにくいとされています。
つまり、成長に伴って自然に治ることが多いということなのね。
つまり、成長に伴って自然に治ることが多いということなのね。
治療法はあるの?
もし成長しても治らなかった場合、治療法はあるのかしら?
確か、徐々に摂取量を増やして慣らしていく治療法があったような・・・
聞いたことあるわね。
でも、治療中に重大な事故が起こったこともあったわよね・・・?
※ 産経ニュース「牛乳アレルギーの治療中に心肺停止 学会が注意呼びかけ」
食物アレルギーの治療法としては、「経口免疫療法」が知られています。これは、 アレルギーの原因となる食物を、摂取しても安全な少量から継続して摂取していくことで体を慣らし、徐々に摂取量を増やしても症状が出ないようにしていく治療法のことです。
調べたところ、成功例もあるようです。
しかし!!
日本小児アレルギー学会が出している「食物アレルギー診断ガイドライン2016」では、「経口免疫療法を推奨しない」との記載があります。
理由は、以下の通りです。
- 一部の症例には治療効果はあるがエビデンスレベルは低い。
- 経過中の症状誘発が必発である。
- 予期せずアナフィラキシーショックを引き起こすことがある。
- 経口免疫療法終了後に、治療対象の食物の摂取により症状が誘発される場合がある。
また、同ガイドラインでは、経口免疫療法の実施について
「 食物アレルギー診療を熟知した専門医(日常的に食物経口負荷試験を実施し、症状誘発時の対応が十分に行える医師)が、症状出現時の救急対応に万全を期した上で、臨床研究として慎重に施行すべきである。 」
としています。
自己判断で行うのは非常に危険です。絶対にやめましょう。
アレルギーへの対処法は?
それでは、アレルギーが治らなかった場合は、どうすればよいのでしょうか。
アレルギーへの対処法は、アレルギー症状が出ないようにする「予防」と、アレルギー症状が出た時に症状を緩和する「対処」があります。
アレルギー症状の「予防」
アレルギー症状の予防は、原因食品を除去・回避することが基本です。
この際、原因食物の除去は、医師の指導のもとで「必要最小限の食物除去」をすることが重要です。
「必要最小限の食物除去」とは、食物経口負荷試験(※1)などの結果をふまえた医師の診断に基づいて、実際に食べて症状が出る食物のみを除去し、食べても症状が出ないものは除去しない(例えば、鶏卵アレルギーでも鶏肉は食べられる、ピーナッツアレルギーでも他のナッツ類は食べられる、など)という考え方です。
また、乳幼児は成長とともに治ってくることが多いため、定期的に食物経口負荷試験を受けて食べられる範囲(量)を広げていくことが大事です。
※1 食物経口負荷試験とは: アレルギーが確定しているもしくは疑われる食品を単回または複数回に分割して摂取させ、誘発症状の有無を確認する検査
なお、初めて食べさせるときはアレルギーがどうかわからないので、
- 病院が開いている時間に
- 少量から
食べさせるのが鉄則ですね。
アレルギー症状への「対処」
初めて食べさせたものでアレルギーが出てしまった場合は、迷わず病院に連れていきましょう。
既にアレルギーがあるとわかっている食物を誤って食べてしまった場合は、基本的にはかかりつけ医から事前に指導されたとおりに対応します。
以下に、一般的な対処法を記載しますが、あくまで参考とし、医師の指導に従ってください。
軽症〜中等症の場合
- 症状の変化に注意をはらい、厳重に観察する
- 食べた直後であれば食べたものを吐かせる
- 主治医から処方されているお薬がある場合は必要に応じて使用するが、効果を過度に期待しない
- 症状の進行がない場合は、最低1時間は経過を観察し、後日医療機関を受診する
- 症状が進行したり、おさまらない場合は迅速に医療機関を受診する
アナフィラキシーショックを起こしたら
アナフィラキシーショックの時は、生命の危険もあり得るので、迅速な対処が必要です。
血圧が下がる、意識を失うなどのショック症状があらわれたときには緊急に対応し、できるだけ早くアドレナリンを筋肉注射する必要があります。
そのため、アドレナリン自己注射器(エピペン)を事前に処方されており、常時携帯するように指導を受けている患者さんもいます。
エピペンとは、医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤です。本人や家族が注射するのが基本ですが、本人・家族に代わって園・学校の先生、救急車の救急救命士も注射することができます。
エピペンはあくまで補助治療剤なので、注射後は必ず医師の診断を受ける必要があります。
参考:アレルギーi「食物アレルギーの症状が出てしまったときの対応は?」
日本ハム食の未来財団「食物アレルギーの治療と対処法」
まとめ
本記事をまとめると・・・
- アレルギーは成長に伴い治ることが多い
- 徐々に慣らして克服する治療法もあるが、危険が伴うので自己判断では厳禁
- アレルギー症状の予防には、除去食が有効
アレルギーになってしまうと、治療できるとは限らないのね・・・。
だったら、そもそもアレルギー体質になるのを防げないのかしら?
というわけで、次回は「食物アレルギーになるのを防ぐには?」をお届けしたいと思います。
つまり、背負うリスクは大きいけれど、治るかどうかはわからないってことね。