赤ちゃんが履くおむつは「テープタイプ」と「パンツタイプ」に大分されます。
中でもパンツタイプは、おむつ交換の時におむつの横側を破って交換します。
でも、なんであんなにきれいに横側が裂けるのでしょうか??その謎に迫ります。
目次
おむつの種類「テープ」と「パンツ」
おむつの種類って2種類あるんだって!?
そうね「パンツタイプ」と「テープタイプ」よ。
子供が二足歩行するようになると、パンツタイプが便利ね。
パンツタイプは、おむつの横側を破って交換するけれど、なぜこんなきれいに破ることができるのか知っているかい?
みなさんはご存じですか?
写真のように、パンツタイプのおむつは横側をぺリペリ破って交換しますよね。
普段使用していても破れないのに、破りたい時だけ素手で破ることができる。
こんなところにも日本のおむつには優れた技術が使用されています。
今日は、そんな痒い所に手が届くおむつの技術を紹介します。
パンツタイプおむつの仕組み
テープタイプとの違い
テープタイプとパンツタイプは何が違うのでしょうか。
テープタイプのおむつは、再度に設けられているマジックテープを用いて幼児に装着するのに対して、
パンツタイプは、初めから立体的に造形されていて、パンツのように履かせるだけで装着することができる。点で異なっています。
パンツおむつの構造
一般的なパンツタイプのおむつの模式図を下に示します。
一般的なパンツ型使い捨ておむつは、
- キャラクターがプリントされている外層シート 61
- 肌に直接触れる内層シート 62
- ギャザーと呼ばれる弾性部材 63
- 尿を吸収する吸収体 5
- 引き裂き部分であるサイドシール部 8
から構成されています。
今回注目するのは、おむつを引き裂くことができるポイントとなる「サイドシール部8」です。
引き裂き部分の構造
一般的に、パンツタイプのおむつは、
着用時に着用者の腹側に配される腹側領域の両側部と、背側に配される背側領域の両側部と、
を接合することによって一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部により形成されています。
下に参考図を示したよ
引き裂きやすくてもダメな理由
パンツタイプのおむつを拡げるとき(おむつを装着するとき)或いはおむつ着用中には、サイドシール部に横方向の力が加わります。また、おむつの着用時におむつを引き揚げるときには、サイドシール部に長手方向への力が加わります。
このようにサイドシール部には様々な力が加わりますから、一般的にはサイドシール部の強度を高く設定する必要があるのです。
しかしその一方で、おむつを脱ぐ場合には、サイドシール部を引き裂いて腹側領域と背側領域とに分離させます。ですから、引き裂き部分の強度が強すぎるとおむつを交換するときに力が必要になり、交換時のストレスが増してしまいます。
この観点からはサイドシール部のシール強度が高すぎるのは望ましくありません。
要するに、
履かせるときや履いてるときは破れないけど脱がせるときはカンタンに破れるちょうど良い強度が求められるの
ってことね。
そうなのです。引き裂くサイドシール部の強度は、弱くても強くてもいけない、微妙なバランスで成り立っているのです。
では、どのようにしてその強度を調整しているのか、その考え方を見てみましょう。
引き裂きやすさを調整している技術的な秘密とは
どうやってサイドシール部を作成しているの?
どのような開発コンセプト(アイデア)をもって、引き裂きやすさを調整しているのでしょうか。
そもそも一般的には、紙おむつの腹側領域の両側部と、背側に配される背側領域の両側部は、樹脂(プラスチック)で形成されています。
ですから、
① サイドシール部に接着剤を面状に塗工して、部材端部を外装体を構成するシート間で固定する方法
② 腹側領域の両側部と、背側に配される背側領域の両側部と、を熱圧着させる方法
の一方又は両方の方法を用いることで引き裂き部分であるサイドシール部を形成しています。
引き裂き容易性を確保するには?
接着面積の調整
しかし、サイドシール部全面を接着あるいは圧着してしまうと、接合強度が高すぎて「 使用後の脱衣時における引き裂き容易性 」を損なってしまうのです。
ですので、全面を接着しないという方法が主に採用されています。
すなわち、下のパンツタイプおむつの展開図で言いますと、両サイドの黒いドット部分のみを接着することによって接着強度を調整しているのです(図は参考図です)。
我が家にあるメリーズパンツタイプのサイドシール部を撮影した写真です。
横方向に長く接着されているのが分かると思います。
この接着の「長さ」や「幅」、「ピッチ」を調整することにより、
接着強度を調整しているのですね。
異種材料の組み合わせ
先ほどの接着方法や接着面積を最適化する以外にも、面白い技術が報告されています。
通常、パンツ型使い捨ておむつのサイドシール部においては、サイドシール部を形成する繊維に熱可塑性繊維(不織布素材)を用いています。
ですので、尿などのを吸収する前のサイドシール部の剥離強度と、尿をを吸収した後のサイドシール部の剥離強度には変化がないのが一般的でした。
花王株式会社の特開2020-80940によりますと、サイドシール部を形成する部位にセルロース系繊維を併用する技術が紹介されています。
従来の不織布素材と吸湿性のセルロース材料とを組み合わせることにより、おむつの着用中において体液である汗を直接サイドシール部で吸収することができ、体液を吸収する前のサイドシール部の剥離強度に比べて、体液を吸収した後のサイドシール部の剥離強度を低下させることができるそうです。
この材料を用いれば、使用後におむつを脱ぐ場合には、サイドシール部を引き裂き易くなるりますね。
さらに、セルロース系繊維の配向を調整することで、おむつを拡げるとき、或いはおむつの着用中の腹囲変動時に力が加わったとしても、サイドシール部が破れにくくなるといいます。
このようにサイドシール部の材料を変更することによっても着用時或いは着用中における破れ防止性と、使用後の脱衣時における引き裂き容易性とを両立することができるようになるのですね。
さいごに
今回はパンツおむつがなぜ引き裂けやすいのか、そのメカニズムについて書いてみました。
普段、あまり気にすることはないかもしれませんが、知っておくと「鼻高」気分が味わえると思います。
一つ注意していただきたいのですが、本記事は特許公報の情報を基に作成しています。ですので、全メーカーの量産されているパンツおむつに該当しているとは限りません。各社日々しのぎを削って研究開発をされていると思いますので、参考程度にとらえておいていただけると幸いです。
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